直島の建築といえば安藤忠雄氏の美術館建築が有名ですが、
注目すべき建築はそれ以外にもありますよ!
今回は三分一博志氏による『The Naoshima Plan』についてまとめました。
建築好きの人には特に気になる建築もあると思いますので、ぜひ鑑賞してみてください。
もちろん建築好きでなくとも「なんとなく居心地が良い」と感じる作品が多いのでリラックスできると思いますよ。
三分一博志氏について
広島を拠点として、瀬戸内地方で主に活動している建築家です。(写真左)
建築がいかにして地球の一部になりうるかを一貫してテーマに掲げています。
時間も労力もかけて入念にその地域の風土・歴史・文化や「動く素材」について調査、分析し、それを元に設計を行うことが特徴的です。
直島に近いところだと犬島の『製錬所』があります。
また、広島の『おりづるタワー』なども有名でしょうか。
自然とのつながりを強く感じることのできるこれらの作品も、個人的にはとても好きです。
国内だけでなく海外でも高く評価され、注目を集めています。
『The Naoshima Plan』とは
キーワードになるのは「動く素材」。
『The Naoshima Plan』は風・水・太陽などの美しさや大切さを再認識する試みとして位置づけられています。
アーティスト三分一博志氏が直島を調査し、風土・文化・自然との共存を、建築を通して受け継ぐ目的で作られました。
2022年現在は島内に4つの作品があります。
そのどれもが風・水・太陽を生かす造りになっており、屋内にいても自然と繋がっているような清々しさのある建築です。
直島の建築といえば安藤忠雄氏の美術館等が有名です。
個人的な感想ですが、建物そのものやその空間にフォーカスを置くのが安藤忠雄氏の建築で、周囲の自然にフォーカスを置いているのが三分一博志氏という印象です。
対照的な建築ですが、どちらも直島という地の文化や風土に根ざした建築であることは実際に屋内に入ってみると感じることができるでしょう。
『直島ホール』
直島ホールは本村地区、直島町役場の裏にあります。
ぱっと見て印象的なのは全体の高さの半分以上を占める大屋根。
総檜葺きでこのサイズの大屋根はそうそう見られるものではありません。
また、大屋根の内側は総漆喰塗りで迫力と美しさを兼ね備えています。
風向きに合わせた風穴をつけることで自然と足元のスリットから風が送り出され、空気が循環する仕組みになっています。
内部はアリーナになっておりスポーツ等もできる造りです。
それだけでなく、直島の伝統芸能である「直島女文楽」のための舞台が設置されています。
屋内は穏やかな風の循環とともに静かな空間。
音が良く響くので、喋る声や足音などが反響する少し不思議な空間です。
周囲も池や緑が配置され、穏やかな空間が広がっています。
現在鑑賞できるのは外観のみとなっています。
すぐそばに解説パネル等もありますので、そちらを読みつつ外観を楽しんでください。
夜に直島ホールを使用している場合、大屋根の風穴から光が漏れ出る幻想的な景色が見られますので、チャンスがあれば夜にもお散歩してみてもよいかもしれません。
『直島の家ーまたべえ』
こちらは民家なので一般に公開はされていませんので、簡単な紹介だけ。
この建築の特徴は冷暖房のための構造にあります。
夏は屋根の下に水を流すことで屋内を冷却し、冬はサンルームで太陽によって暖められた空気が高低差によりリビングに流れていく仕組みになっています。
瀬戸内国際芸術祭2013で建物の一部分を制作し「動く素材」の機能を実験していました。
そのときに中にも入ることができましたが、冷房設備がないと言われて首をかしげるくらい涼しかったのを今も覚えています。
風・水・太陽を肌で感じることのできる住宅です。
『水』
引用:Benesse Art Site Naoshima公式HP
この作品は、機能としての「動く素材」だけでなくその美しさにも着目した作品です。
本村地区の建築によく見られる南北の続き間を生かして風が通り抜けます。
夏場の暑い時期には、この作品の中に入るだけでも涼を得ることができますよ。
また屋内には井戸水の湧き出る水盤が設置。
桟敷に座って足を浸すことができるので、足湯ならぬ足水をしつつ通り抜ける風を感じることで「動く素材」を肌で感じることができます。
それと同時に目の前にある水の揺らめきやきらめきを眺めて目にも涼しく感じます。
足を浸すのならタオルか何か拭くものがあった方がよいので、ハンドタオルでも1枚あるといいですね。
また水盤は桟敷から以外と遠いので、小さいお子さんでは座っても足が届かない場合があります。
無理して水に触ろうとして落ちてしまう子も過去にはいたそうなので、足を浸す時には十分注意してあげてくださいね。
もちろん大人の方も、鑑賞に夢中になって足元を誤ることがないようご注意ください。
『住』
引用:Benesse Art Site Naoshima公式HP
こちらの作品は、これまでの「動く素材」との対話に加えて気候変動、資源やエネルギーの問題などにも考慮した建築です。
「いかに地球に知的に住まうか」をテーマに設計されています。
そのために取り入れられたのが「貫」。
「貫」とは垂直に立つ柱の間に通す水平の構造のことです。
昔ながらの日本建築では”大黒柱”と呼ばれる大きな柱が屋根を支え建物全体のバランスを整える役割を果たしてきました。
こちらの建築では、そういった家を支える中心となる太い柱は使用されていません。
貫と平間柱と呼ばれる構造により縦横の木材を組み合わせることで、建物全体で強く支えることができています。
もちろん「動く素材」についてもしっかり取り入れられています。
東向きで太陽を感じることのできる部屋、屋根の下を流れて室内を冷却する水、床下を抜ける風などをより強く感じることのできる建築とも言えます。
「動く素材」を生かした建築を数百年先の直島へと繋ぐ建築です。
ちなみにここも住居として設計されていますので、実際に人が住み始めると鑑賞できなくなります。
2022年の瀬戸内国際芸術祭期間のうち、春会期に工事中の構造が見える状態を、秋会期に完成した建物を公開するのがラストチャンス。
私は既に春会期は見てきました~!
建築としても観察するのはとても面白いですし、単純に居心地の良い空間になっているので座ってゆったりと鑑賞している人も多かったです。
建築好きの方は是非とも両方見に行ってください!
チケットや鑑賞料などについて
『The Naoshima Plan』は鑑賞にチケットや料金は必要ありません。
といっても、『直島ホール』は外観のみの鑑賞、『直島の家-またべえ』は非公開なので中に入って鑑賞できるのは『水』と『住』のみ。
この2作品もチケットやパスポートなどを持っていなくても入って鑑賞することができます。
入り口には島民のスタッフの方がいますので、疑問に思ったことなどは聞いてみるとよいでしょう。
余裕があれば、作品のこと以外でもいろいろ教えてくれるかもしれません。
まとめ
今回は直島の風土を生かす建築『The Naoshima Plan』についてまとめました。
絵画やインスタレーションなどのアートとしての作品鑑賞だけでなく、こういった趣の違う作品もじっくり見ていただければと思います。