直島でアートを楽しむ場所は、美術館だけではありません。
本村地区にある家プロジェクトも目玉の1つです。
狭い路地をウロウロ巡りながら作品を鑑賞していく作品群です。
同じ地区にANDO MUSEUMや『水』もあるので、見るものはたくさんあります。
そこで今回は、家プロジェクトの見どころや、チケットの購入方法・料金についてまとめました。
家プロジェクトとは?
家プロジェクトは本村地区にある古い民家や神社を改装し、空間そのものを作品化した作品群です。
現在は7つ公開されています。
本村地区の、車も入れない細い路地をうろうろ移動して作品を巡っていきます。
ちょっと探検する感じで、少年の心が刺激されますよ。
実際に島民が生活している本村地区を巡り、様々なエピソードが生まれるこの地区一帯が作品とも呼べます。
作品だけでなく、そこで過ごすあらゆる時間を楽しんでくださいね。
同じ地区にカフェなどもたくさんあるので、カフェを巡るのも楽しいですよ。
宮島達男『角屋』
こちらは家の中にプールがあり、その中にデジタル数字がたくさん設置されています。
それぞれの数字が移り変わるスピードはバラバラ。
薄暗い屋内で、水の揺らぎと数字の移り変わりを眺めているのは心が凪いでいきます。
ちなみにこのデジタル数字の移り変わりスピードは、作品制作時に公募で集まった島民がそれぞれ設定したもの。
2018年に改めてタイムセッティングされたときにも、最初に設定した島民に声がかかり、可能な限り同じ人が再設定したのだとか。
私の幼馴染も参加したと聞いて少し嫉妬しています…(笑)。
ちなみにプールで移り変わる数字以外にも、窓に数字が表示されているところがあります。
数字の移り変わりとともに、外の景色が見えたり見えなかったりと移ろいます。
ベネッセハウスミュージアムのミュージアムカフェにあるスイーツは、この作品をモチーフにしているものも。
家プロジェクトの後でベネッセハウスミュージアムに行くなら、ぜひそちらも楽しんでください。
杉本博司『護王神社』
こちらの作品は、地上に見える本殿と拝殿、地下に入って行く石室から構成されています。
本殿と拝殿はいつでも展示時間に関わらずいつでも見学、参拝が可能です。
石室から本殿までがガラスの階段で結ばれており、地上側から見ても石室内から見ても神秘的な雰囲気が漂います。
この護王神社については、以下の通り。
杉本氏にとって護王神社の発想の起点となったのは、現存する中でもっとも古様の神社の一つである伊勢神宮よりもさらに古い神社形式があるならばどのような形だったのかを考えることでした。その中で、神明造の社と古墳が同時に存在した時期があったかもしれないという独自の歴史解釈をおこない、拝殿の地下に石室を設けたのです。そこには「伊勢神宮的な神道と古墳時代を結び付ける」というコンセプトが込められています。
こういった背景を知ったうえで楽しむアートもまたいいものです。
石室の出口からは水平線が見えるように設計されています。
ベネッセハウスミュージアムに展示されている『海景』シリーズにも通ずる体験になります。
こちらの石室は一度に入れる人数が限られているので、順番を待ってはいるようになります。
混雑する時期には待ち時間がかなり長くなる可能性もありますのでご注意を。
ジェームズ・タレル『南寺』
引用:Benesse Art Site Naoshima公式HP
家プロジェクトの中でも最も”体験型”と呼べるのがこちらかもしれません。
建物の設計は安藤忠雄氏によるもの。
暗い建物の中で、目が慣れてぼんやりと周りが見えてくる過程をじっと感じる作品です。色々なことが頭に浮かんでは消えていく、瞑想に通じるところもある時間。
日常の雑多な刺激がない空間というのは現代ではなかなか珍しいですからね。
この機会にそういった時間を感じることも、現代人にとっては大きな”非日常”でしょう。
天気が良く外が明るい日ほど、中に入った時に感じる闇は濃くなります。
自分の手すら見えないような空間なので、移動はゆっくり慎重にしましょうね。
ジェームズ・タレル氏の作品は地中美術館でも楽しむことができます。
光の芸術家である彼の作品は、印象強いものも多いですよ。
『南寺』の作品は時間交代制になっています。
混雑する日には整理券が配布され、券を持っていなければ鑑賞できません。
整理券の配布は当日にしかできず、予約はできません。
鑑賞したい場合、まずは現地に行って整理券を確保してから他の作品を回るようにした方がいいです。
須田悦弘『碁会所』
昔は実際にここで島民が集まって碁を打っていた碁会所。
その建物を作品としたのがこちらの『碁会所』です。
枯山水を思わせる無駄なもののない庭に、屋内の木彫りの椿。
木彫りの椿を見てから振り返ると本物の五色椿が生えており、対比が感じられます。
左右に部屋があり、木彫りの椿があるのは左の部屋。
一方右の部屋には何もないように見えますが、そんなことはありません。
部屋の入口には立ち入り禁止の目印のために置かれているような竹がありますが、こちらも作品です。
左の部屋の竹は本物の竹ですが、右の部屋の竹は木彫りです。
本物と木彫りの対比は椿だけでなく、竹もということですね。
なんとも洒落っ気のある作品だと思います。
『南寺』などは静寂の中で楽しむ作品ですが、こちらはその限りではありません。
元々が人の集まる場所ということもあり、人が多くても少なくても楽しめます。
人が多い時には昔ここに人が集まってわいわい囲碁を打っていた様子を想起します。
逆に人が少なく静かな中でみるのも、時が移ろって碁会所として人が集まらなくなったところを思い少し哀愁を感じつつ鑑賞できます。
須田悦弘氏は瀬戸内国際芸術祭ができるより前、2001年と2006年のスタンダード展時代から参加している方です。
ベネッセハウスミュージアムにも『雑草』という作品があります。
『雑草』はコンクリートの壁からひょっこり生えている緑がなんとも可愛らしい作品です。
職員に本物の雑草と間違えて抜かれたことがあるというエピソードも含めて、私の好きな作品の1つです。
千住博『石橋』
20年ほど前まで実際に民家として人が住んでいた建物を使用した作品です。
元々は製塩業で栄えていた石橋さんのお家だったので作品名にもされたのでしょう。
ちなみにお庭には石でできた橋があります。
どっちが作品名の由来なのかは分かりませんが、両方ですかね?
千住博氏といえば『ウォーターフォール』という滝を描いた作品が有名ですよね。
この『石橋』にも、『ザ・フォールズ』という作品があります。
天井から床まで雄大に流れ落ちる滝を描いた大きな作品は内蔵に。
とにかく大迫力で、飲み込まれそうな滝の圧を感じます。
薄暗い室内で、漆の床には本物の水面のようにも見え、まるで滝つぼの目の前に立っているような感覚になります。
滝のモチーフが有名な千住博氏ですが、入ってすぐの『空の庭』と呼ばれる空間の襖絵は彼が新たなモチーフとして選んだ”崖”シリーズの第一弾となる作品群です。
今後の作品展開も気になるところですね。
こちらの作品は、他の家プロジェクト作品と少し離れた場所にあります。
時々迷子になる方もいるので、地図を見ながら向かってくださいね。
大竹伸朗『はいしゃ』
こちらもかつて歯科医を営んでいた建物を作品化したものです。
町役場側から向かうと、2階の窓越しに女神の顔がチラリと見えます。
ペインティングやスクラップなど、様々なスタイルを取り入れたこの作品。
大竹伸朗氏の世界観をしっかり感じられます。
建物自体は小さいですが、中を見て出てくると「こんなに狭かった?」と思うくらいお腹いっぱいになる作品ですよ。
インパクトの強い空間ばかりですが、中でも印象に残りやすいのは『女神の自由』でしょうか。
”自由の女神”ではないですよ(笑)。
私個人的には、入ってすぐ左側にある船底を思わせる暗い空間が好きです。
”深海”っぽさがあり、絶妙な不気味さが何とも言えません。
こちらの作品は2021年8月に、建物前のスロープ部分をリニューアル。
歯茎色の土壁に小さな歯がおよそ2,000個も埋め込まれています。
そう聞くとグロテスクな印象を抱くかもしれませんが、遠目に見ればそうでもないです。
気になる方はぜひ寄りで観察してくださいね。
白い歯がほとんどですが、中には金歯と銀歯もあるとか。
隠れ○ッキーならぬ、隠れ金歯と隠れ銀歯も探してみてください。
内藤礼『きんざ』
こちらの作品は、1人きりで中に入り鑑賞します。
同時に複数名入ることはありません。
実際に入って、見て感じていただきたいのでここであまり多くは記載しません。
15分間の鑑賞時間がありますので、じっくり過ごしていただければと思います。
今は入る前に多少説明はしてくれるそうなので、それも聞いて鑑賞していただければ楽しめるでしょう。
こちらは他の家プロジェクト作品と違い、完全予約制での鑑賞のみです。
鑑賞したい場合は必ず事前に予約をしてください。
料金も520円が別途必要になりますのでご注意ください!
チケット購入や料金について
バス停「農協前」のすぐ近くにある本村ラウンジ&アーカイブで家プロジェクトのチケットを購入することができます。
チケットは2種類あり、料金については以下の通りです。
- 共通チケット(1,050円) :『きんざ』以外の6軒を鑑賞可能
- ワンサイトチケット(420円):『きんざ』以外の6軒のうち1軒を鑑賞可能
- 『きんざ』は完全予約制・料金は別途520円必要
- 15歳以下は無料
瀬戸内国際芸術祭の期間中であれば、芸術祭のチケットで鑑賞することができるので家プロジェクトのチケットは必要ありません。
また、作品の鑑賞については以下の点にもご注意ください。
- 時間 :10:00~16:30 (「南寺」最終入館 16:15)
- 定休日:月曜日 ※ただし、祝日の場合開館、翌日休館
- 『南寺』
混雑する日には整理券が発行される場合がある - 『きんざ』
完全予約制・料金は別途必要
まとめ
今回は家プロジェクトの見どころやチケットの購入方法・料金などについてまとめました。
本村地区で家プロジェクトやカフェを巡りながら、歴史・アート・人が織りなす時間を楽しんでくださいね。